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大河原 健さんは山でないと自分自身を見直せないタイプ?なんでしょうけど(笑) -実は私の周り、そんな人ばかりで困っちゃうんですけど(苦笑)、 実際「山」でなくても自分自身を見直す機会は持てるはずなのに、それがあえて「山」であるところに意味があると言う事なのでしょうか? エベレスト・ヌプツェ・ローツェ
野口 そうですね。やはり、山の中に自分を置いて自然と向き合い、自然に受け入れてもらえることで、新たな自分自身を発見できるのだと思います。自然は、自分が謙虚な気持ちで望むと『答え』をくれますが、逆に傲慢に接したときには容赦ありません。自然は、自分さえ気がついていなかった『自分』に気付かせてくれるのです。自然は偉大ですよ、本当に。
大河原 健さんにとって山は切っても切り離せない存在と言うことになるのでしょうね。
野口 その通りです。16歳から今まで(現33歳)ずっと山に関わってきましたから・・・「山」は私にとって人生の師と言えるかも知れません。
大河原 「山」から教わったもので一番印象深い事はなんでしょうか?  
野口 大学入学時に「世界最年少エヴェレスト登頂宣言」をしましたが、2度続けて登頂に失敗し、3度目に成功を果たしました。1度目は自分の力不足が原因でした。2度目は悪天候に阻まれて頂上まで数百メートルと言う所で、悩んだ挙句の撤退をしました。

1度目の失敗でバッシングを受けていましたので、撤退する事にかなりプレッシャーがありました。それで、猛吹雪の中で先に進むかどうかを1時間ほども悩みに悩んだのです。登頂して「生還」する可能性が50%・・・「死」の可能性もまた50%・・・本当にぎりぎりまで悩みました。

「冒険とは生きて帰ること」と言う哲学の持ち主の植村氏でさえも、亡くなる前にエヴェレスト登頂失敗、南極行失敗と続いて、マッキンリー山中での最後の日記には、「何がなんでもマッキンリーに登るぞ」と書き残し、その次の日に帰らぬ人となられたのでした。

<何が何でもと・・・>言う事は、<いかなる状況においても決行する>という事になりますから、自然に対し何が何でもと言う事は絶対ありえないのです。植村氏はそれを一番良くご存知の方であったはずなのに・・・何故・・・何が?どうして?!彼をそこまで追い込んでしまったのか、初めは理解できませんでした。

私にとっては忘れる事が出来ない98年の2度目のエヴェレスト登頂断念。山頂直下から苦悩の末に引き返したこと。悪天候で悩んだ挙句引き返したのは、正しい判断だった。今でもそう信じています。しかし、日本では2度目の失敗として受け止められ、理解してもらえなかったのです。とても辛い思いをしました。その時はじめて植村氏の両極の気持ちが分かった気がしました。『冒険とは生きて帰ること』と『何がなんでも登りたい』っていう気持ちとが・・・

山や自然に対し少しでも傲慢な態度で臨んだらとり返しがつかない結果が待っています。そして冷静な判断をするには勇気と謙虚さが必要だという事。山に入るたび、いつだって静かにそしてゆっくりと僕に語りかけてくるのです。
 自然に感動!自分自身に感動!!
大河原 山や自然は脅威だけでなく、感動と安らぎをも与えてくれます。でも、それを当たり前と受け止めて、人間は傍若無人に振舞ったらいけないんですね。 登山
野口 同感です。僕は、「制覇する」という言葉が嫌いなんです。大きな山の頂点に立ったからといって、その山を制覇したというのは恐れ多い気がしてなりません。頂に立てる喜びは、冷静さと勇気、自然に対する謙虚な気持ちを持ち続ける事ができた人を「山や自然が受け入れてくれた」証しとしてのご褒美ではないかと考えるのです。
大河原 それは、高い山に限らず、トレッキングにおいても言えることですね。山の中でいかに楽しむことが出来るかは、どれだけその山や自然に溶け込むことができたか、によるのかもしれませんね。
野口 自然や山に溶け込むためには事前の情報収集も大切です。それにより、山歩きがもっと楽しめると思いますよ。事前の資料や写真で見た憧れの場所を目指し、何日も歩き、やっと辿り着いたからこその喜びはひとしおだと思うんです。

目の前で繰り広げられる本物の景色は憧れの写真の地と同じ。でもその憧れの地は写真の何倍も美しいことを、自らの足で辿り着いた人だけが感じられるのです。自分の足で、自分の眼で、肌で・・・五感で・・・それら全てが達成感につながり、その場所をその人だけの特別な場所に変えてくれるはずですよ。
大河原 あるトレックリーダーから似たような話を聞いた事があります。初めて6000m級の山に挑戦し、頂上に立ったときは、それまでの辛さや苦労は吹き飛び涙がこぼれるほどの感動があったと・・・

よくよく聞いてみると、それは頂上にたった喜びではなく、そこに辿り着くまでの辛さや苦労を克服し、 トレックリーダーとして参加者をまとめ、無事に全員を頂上に案内できたという自分自身への感動だったんじゃないか、と私は感じたのです。
   
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